協働ステーション中央

【開催報告】アートを通じた場づくりで、 シビックプライドを醸成する協働の取組み〜十思カフェvol.115

高齢化が進み、地域活動の担い手育成は知己の課題。若年層や転入者などとの関わり方に悩む地域コミュニティも少なくありません。
今回は、墨田区内で実施している地域に関心のある人と住民の接点をつくるアートプロジェクトをゲストに迎えました。地域住民が日常的に交流できる場を作り、日々の暮らしや文化の中から地域の魅力を見出し、愛着を深める機会を生み出す事例から、行政との協働の意義を考えました。

今回のゲストは、「一般社団法人藝と」代表理事、インディペンデント・キュレーターの青木彬さん。首都大学東京でインダストリアルアートを学び、その後各所で企画制作スタッフをしたり、自治体の指定管理で運営する劇場で子ども向けワークショップを担当していたといいます。4年半ほど働いたのち、インディペンデント・キュレーターの道に。現代アートの展覧会やプロジェクトを企業や行政と協働で企画運営しています。
「アート活動はギャラリーなどで実施していると思われがちですが、多摩ニュータウンの遊休不動産を活用したアート活動などもしています」という青木さんは、訪れた人たちとアートとの出会いを、まちなかに創出する取り組みが中心。また、自身の体験から「福祉とアート」にも関心を寄せています。

「まちづくり。都市計画。福祉とアート。これらの領域を横断するような取り組みもしています」
そうして話は、青木さんが関わる「ファンタジア!ファンタジア!」へ。この活動は、東京アートポイント計画(※)の一環で墨田区を拠点に取り組んでいます。

※ 芸術文化の創造・発信を推進するため、地域社会を担うNPOとアートプロジェクトを展開し無数の「アートポイント」を生み出す事業。東京都と公益財団法人アーツカウンシル東京による事業。
なぜこうした活動へと至ったのでしょうか。

「2016年にクリエイター長屋兼アトリエをオープンしたんですが、自分たちでスペースを運営するのは限界もあった。
そこで、外に飛び出し、2017年地域にライターが墨田区に住んで記事を書く「ライター・イン・レジデンス」を展開。10日間街中の人をインタビューしました」

それにより、どんなことが見えてきたのでしょうか。

「地域をまちなかアートの場に見立たら豊かな場所になるなと気づいたんです。異なるコミュニティがつながる、つなげる方法として僕らはアートを活用し、対話できるんじゃないかと」
「墨田区は区外で働く人が多い。どんな人たちがいるのか。その人たちの思いを知りたくて、ワンダリングというヒアリングプロジェクトを開始し、地域情報誌『ファンファンレター』を立ち上げました」

市民参加の広報誌づくり「ファンタジア!ファンタジア!」(ファンファン)はこうして産声をあげたそうです。

「デザイナーにレター作成を依頼することもできますが、プロセスを楽しむこともしたかった。レターをつくることに皆が関われることが大事。そこでスタンプを作って自由に置いたり、コミュティセンターのリソグラフを使って印刷したりして、手作りした。月2回発行していますがコロナ禍の今はこれをオンラインで作っています」
地域情報誌ファンファンレターから、地域の人や研究者等と対話して、アイディアを発掘し、まち中で実現する「ラーニングラボ」も誕生したとのこと。

「関係を生み出す。一緒に作る、雑談しながら作る、それが重要。手渡しする。その口実を事務局内部で作る。きっかけを生み出す。それが自分たちの役目。
地域のお祭りに呼んでもらって、そこでワークショップをして参加者とスタンプでレターを作る。来場者の感想を集めて載せたり、自分の新聞を作りたいという人も出てきた。いろんな人が参加して、その場にいる人のノリで、コミュニケーションが生まれる。ファンファンレターはそうしたきっかけを生み出すものとなっています」
また、活動が地域に関わり溶け込んでいくことは容易でないことに対して、青木さんはこう言っていました。

「その街でネガティブ/アンタッチャブルなものだが、まちが作られる際に重要なもの、オリジナリティになっているものなどをアートを通じて見つめる映像作品展をしたことがあった。その際、地域で長年活動してきた人にこう言われたんです。“ヒアリングに加わって、こういう取材を受けて、作品化したのは君たちが初めてだ。発表してくれて良かった”」

「地域の人と衝突して流れた取り組みもあったが、地域のそうした部分をただ闇雲にオープンにするのではなく、地域の事実に淡々と向き合い、評価としてこうした言葉をいただいた。地域に溶け込めたと実感した時だった」と青木さんは言います。
ファンファンの活動は現在(公財)アーツカウンシル東京との協働プログラムに採択されています。事業にはアートマネジメントの専門職「プログラムオフィサー(PO)」が活動を伴走し、支援。P Oは、アーティスト、行政、異なるNPO、住民なども協働をコーディネートしています。組織運営ノウハウを伝授してくれるのだとか。「支援期間も3年。法人としても中長期的に取り組める。そこが魅力でエントリーした」

「都の人がいると自団体だけで進められないことも進められることがある。地域の人に何を確認すればいいのかなど、学ぶところは大きかった。他の採択団体とも知り合うことができ、ファンファンレターの担い手が増えた。また、同じ立場の悩みや情報を交換できるようになった。勉強会も生まれた。何もかも自分たちだけで背負わなくてよくなった。協働の意味でもあると思う」
「誰だって褒めて欲しい。外から見ていいね!と言ってもらえると、やりがいが生まれ、課題解決力が高まったり、人々がポジティブになっていく。逆にアドバイスをもらえたり、組織運営が課題であることを指摘してくれたり。そうしたことで自団体を確認できたりする」ーー。そうした一連の営みを青木さんは「評価を作る」と表現していました。

「僕たちの活動は、共感を生む小さな語り。コロナで大きなイベントができなくなってはいますが、付録付きのファンファンレターを作ってテイクアウト店に置かせてもらい、組み立てるとミニチュア展覧会を組み立てられるなど、コロナ禍でも集まらなくてもアートと市民の関わりを模索している。小さくても確実に取り組む。コロナ禍はそうしたことが協働に求められると思う」
今回のお話も、グラフィック・レコーディングにしていただきました。
次回開催は、7月27日開催。ソーシャルディスタンスに配慮しながら、対面開催を予定しております。ぜひご参加下さい。
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