協働ステーション中央

【開催報告】協働がNPO活動の成長や地域にもたらしたもの〜15年にわたるデートDV予防活動から協働の意義と成果を考える〜十思カフェVol.101

身近な社会課題について考え、解決のヒントと協働の切り口を探る交流イベント「十思カフェ」。101回目の今回は、暴力を受けず安心して生きていける社会の実現をめざす「認定NPO法人エンパワメントかながわ」理事長の阿部真紀さんがゲスト。15年の活動をデータ等で振り返りながら、団体の成長と活動の変遷、その過程において「協働」が果たした意義や役割をお話いただきました。

「暴力を受けていい人は、一人もいない」。エンパワメントかながわでは、対象に合った暴力防止プログラムを開発し、15年間に8187回のワークショップを提供。のべ約30万人の子どもと大人が受講しました。暴力をなくすために伝えるメッセージとして大切にしているのは、「○○してはいけません」「必ず××しなさい」といった、禁止や行動の制限ではなく、「あなたはとっても大切な人」「暴力を受けずに生きていく権利を伝える」「どんな理由があっても暴力を受けていい人はいない」といった、人権の考え方を伝えることです。
エンパワメントかながわの提供するデートDV(※)予防プログラムは、「CAP」(キャップ)と呼ばれます。これは英語で「子どもへの暴力防止」(Child Assault Prevention)の頭文字を取った略称です。子どもたちに「安心」「自信」「自由」の権利があることを伝え、あらゆる暴力から自分の身を守るために何ができるかについて、ロールプレイを交えながら考えます。

※行動を制限したりスマートフォンを無断で見る等の、好きな人との間で生じる暴力のこと。

デートDVを扱うようになった大きなきっかけは、2003年に新聞記事で初めて「デートDV」という言葉を知ったことが大きいのだとか。言葉が生まれるということは暴力として認知されること。「NO」ということができるようになり、啓発もできる。デートDVを予防することができれば、DVや虐待も減らせるのではないか。阿部さんたちはそう考え、CAPを元にしてプログラムを開発し、2004年の団体設立から一貫してデートDVの予防に力を入れてきました。
2005年より、「かながわボランタリー活動推進基金21」という助成金によって教職員向けCAP研修事業を開始。2007年には横浜市との協働事業を実施したり、国の調査を受託。それらの実績が神奈川県との協働事業につながりました。

県との協働事業は、県の教育委員会とかながわ女性センター(現かながわ男女共同参画センター)と共に行うことになりました。教育委員会とは主にデートDV予防教育の普及を、女性センターとは相談体制の構築を行います。デートDV防止に必要な2つの両輪をNPOがつなぐ体制です。当初エンパワメントかながわでは予防教育のみ行うつもりでいましたが、より全体的なシステムの構築をするように県の担当部署より勧められ、相談体制も構築することとなりました。そうして2011年にスタートしたのが、「デートDV110番」です。デートDVに特化した電話相談としては全国で初めて開設されました。
2011年に理事長が阿部さんに交代。「NPOの経営」とは何なのかを改めて考えるため、Panasonicの組織基盤強化プログラムに参加し、コアスタッフが学びなおしました。阿部さん自身も資金調達を学び直し、日本ファンドレイジング協会の認証する「準認定ファンドレイザー」の資格を取得。組織体制の強化にも果敢に取り組んできました。

設立から10年経った2014年、認定NPO法人へ。県との協働実績によって、条例で指定される住民税の寄付金税額控除対象の団体となり、それが認定を取る際にも役に立ったそうです。しかし、事業には大きな変化が出てきました。立ち上げからこれまでの10年間は、次々に助成金を獲得したり協働事業を行い、新しいプログラムを開発、事業化させてきました。しかし、それらが終了していく中で、CAP事業の収入は激減。収入源を模索する中、CAPはもうやめた方がいいのでは、という議論が起きました。そんな中、どんなに収入が減ってもCAPは続けたい。そんな声がスタッフから沸き上がってきました。
ではどのようにCAPを続けるのか?エンパワメントかながわは寄付を募り、不足分はボランティアとして働くことで、CAPを続けることにしました。そうして「1万人の子どもにCAPを届けるキャンペーン」をスタートさせました。


阿部さんは、協働の必要性について「協働なくして何ができる?」と言います。「活動の目的は社会を変えること。ひとりの力、ひとつの団体ではできない。行政だけでもできない。だからつながることはすごく大事」。と力強く語り、お話は終わりました。
次は質疑応答に移りました。ある参加者から、「それぞれが立場を主張しあって協働が進まない。どのような工夫をしているか」という質問が。それに対し阿部さんは、「行政の縦割りをつなげるのがNPOの役割。立場ではなく目的を共有し、人としてつながりませんか、と呼びかける。それでも時間はかかります。2、3年かけてようやくお互いが仲間と思えるようになりました」と答えていました。
最後に、エンパワメントかながわのこれからの活動の参考にしてもらうために、15年の活動を振り返り、「これまでの効果・成果」と、「今後の発展に必要なこと」を参加者一人ひとりがシートに記入しました。効果・成果は、「デートDVの社会的認知の向上」「子どもが自分の言葉で助けてと言える場を提供できたこと」「自分は大切な存在だと子どもたちが思えるようになったこと」などが挙がっていました。今後の発展に必要なことは、「CAPのプログラムの素晴らしさを子どもの親などに伝えていくこと」「CAPをもっと知ってもらえれば、必要性が高まると思う」「企業協賛を付けたワークショップの展開」など、様々な提案が出されました。
前のページへ戻る