協働ステーション中央

【開催報告】都心部における地縁型コミュニティの未来 〜マーケティングとIT で新しい住民を巻き込む取り組み〜 十思カフェVol.100

身近な社会課題について考え、解決のヒントを探る交流イベント「十思カフェ」。100回目の今回は、人形町二丁目浪花会青年部 部長、株式会社福水戸家 代表取締役社長の磯部 一郎さんをゲストに迎え、都市部における地縁コミュニティのあり方やそれを実現する方法についてお話いただきました。

まずは各テーブルで自己紹介・参加理由などをシェアするアイスブレイクから始まりました。会場が賑やかな雰囲気に包まれたところで、磯部さんの生い立ちや、町会に関わるようになった経緯についてお話しいただきました。人形町で生まれ育った磯部さんは、小さい頃から地域との関わりが多かったそうです。近所の家でご飯を食べたり、声をかけあったりした記憶が残っていると言います。大人になり、ご自身が培ったITのノウハウで「自分を育ててもらった地域に貢献したい」と思うようになったことが、現在の仕事や町会の活動の契機になっているとのことでした。
続いて、人形町二丁目浪花会(以下、浪花会)のご紹介。
町会・自治会とは、地域住民がお互いの親睦を深め、住みよいまちをつくるために自主的に組織された団体のこと。現在、中央区には176の町会・自治会があり、親睦活動や情報交換、防災・防犯に関わる活動のほか、地域のコミュニティ形成に関わるさまざまな活動を行っています。
そのなかで、浪花会は日本橋人形町二丁目21から31番、37番を区域とする町会です。区域の住民が活動に関われるのはもちろん、住んでいない人が活動を応援できるオンラインコミュニティもあり、活動事例を学ぶ勉強会などを実施しているとのことでした。

その一方、浪花会では高齢化が進んでおり、10年後には担い手となる20-30代がいなくなってしまう状況だそうです。「コミュニティ自体が途絶えかねない」と磯部さんはいいます。また、区域では戸建てだけでなくマンションもあるため、まだ地域との接点を持っていない新しい住民や、子育て世帯の方もいるそうです。そこで、子どもが小さいうちから地域で育てることで、10年後その子どもたちが地域に関わりたくなる土壌をつくり、担い手育成につなげたいと磯部さんは語ります。だからこそ今、新しく住み始めた人を町会の活動に巻き込むべきだといいます。
次に、子育て世代を巻き込む具体的な方法について、お話しいただきました。磯部さんは、ITのシステムやコンサルティング、ウェブマーケティングを行う会社経営しており、そのノウハウを活用しているといいます。ここで大事になのは、「成功体験」と「ITの利活用」という視点です。
まずは「成功体験」について。新しい住民へのアプローチを行う場合、まずは相手にとって参加しやすい状況をつくることが有効だといいます。具体的には、WEBサイトやLINEグループなどを活用して活動の様子を伝えることや、気軽にエントリーできるよう各種申し込みにはGoogleフォームを設けることなどでITの利活用をすすめています。
次に、一度でも活動に関わってくれた人が、町会の活動を通じて成功体験を得やすくする雰囲気づくりも大切です。例えば、磯部さんはイベントの出席率は問わず、参加したこと自体を「貢献」とし感謝する姿勢を大事にしています。また、イベントではプロジェクトリーダーに役割を任せることで、子どもに地域で親が頑張っている姿を見せることも成功体験につながるといいます。こうして、それぞれが無理のないペースで町会への参加を深めているそうです。
後半は、浪花会の改革プロセスにおける「ITの利活用」について話してくれました。新しくこの町に住んだ人たちが町会に参加する機会を増やすにはどうしたらいいか。新しく引っ越してきた人のニーズを把握する必要があると考えた磯部さんは、近隣マンション住民を対象としたアンケート調査にITの導入を試みました。中には難色を示す人もいましたが、新しい住民の人たちの現状を把握することが町会の未来につながると対話を重ね、導入が実現したそうです。「そして結果の発表を新しい住民の人たちがしたんです。課題が可視化されたことで、古くからいるメンバーと共有できた。それが歩み寄りの一歩につながった。このことは大きなきっかけだった」「全てをIT化することがよいわけじゃない。必要な情報は紙でも残す。選択肢の幅を広げること」と磯部さんは言います。
地縁コミュニティの強さは「もしも」のときに発揮される―。災害が頻発している日本において、町会の役割はとても重要だといいます。「すべてのコミュニティで同じようなことができるわけではないと思うが、このノウハウをぜひ他地域でも活かしてもらえたら。今後は他地域で参考にできるように、地縁コミュニティ間で情報や資源を補えるようなプラットフォームをつくりたい」と語る磯部さん。
イベントの最後には会場からも、賃貸住宅に暮らす人へのアプローチや近隣町会との関係、より具体的なITの運用方法など、様々な質問がありました。終了後も各テーブルで名刺交換が行われるなど、新たなつながりが生まれていました。
次回101回目は11月26日(火)19時から開催します。認定NPO 法エンパワメントかながわがゲスト。自治体協働を経て15 年間で神奈川県下の子どもとおとな約30 万人にCAP(子どもへの暴力防止)やデートDV予防プログラム等を提供してきました。
そうした活動から「協働」が団体の成長や地域社会にもたらす効果・成果を振り返ります。ぜひご参加ください。
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